2020-08-24

A.メルケル『わたしの信仰』読みました

A.メルケル『わたしの信仰』、新教出版社、2018年

わたしたちは自分たちのルーツを知り、この遺産をくりかえし念頭におかなくてはなりません。なぜならわたしたちはグローバル化された世界に生きており、そのなかで絶えず他の文化や宗教との交流を行い、一緒に未来をうまく形成したいと願っているからです。自分たちの魂と価値観を熟知しているヨーロッパだけが、未来のための正しいコース変更に取り組めるでしょう。ヨーロッパの価値観は、人間の尊厳についての観念に要約されています。神の似姿として人間を理解するキリスト教は、国籍や言語、文化、宗教、肌の色、性別などによらないあらゆる人間の平等をわたしたちに教えています。それゆえ政治の基準は国家ではなく、政党でも人種でも階級でもありません。国家のあらゆる活動の中心には、人間とその不可侵の尊厳があるのです。ローマ教皇ベネディクト十六世は回勅「真の恩寵」のなかで次のように強調しています。「人間において最初に守るべき、そして利用すべき資本は、総体としての人格である。」

ドイツの首相メルケルさんの演説や講演を集めたもの。彼女が政治というものをどういうふうに理解しているのか、その政治哲学を彼女の信仰がどのように支えているのかがわかる。 読みやすいのでおすすめ。ちゃんと考えて、丁寧に政治をやってる。真摯、誠実、真剣。それらがいかに日本の政治に欠けていることか、痛感させられる。政治とは何か、宗教とは何か、よく知らない多くの人にぜひとも読んでほしい。