2020-11-19

森村敏己『なぜ「啓蒙」を問い続けるのか』読みました

 なぜ「啓蒙」を問い続けるのか

とってもわかりやすく明瞭に書いてあるので、読書初心者にオススメ。啓蒙ってなに、って人にも絶賛オススメ。

「啓蒙とは、急進的な改革によって悪弊を一掃し、一挙に理想社会を実現しようとする運動ではありません。改革は少しずつしか進まないし、大きな混乱を防ぎながら改革を行うには、徐々に進めるのが望ましいとされたのです。法と一般精神との適合関係を重視し、一般精神を無視して法や制度を押しつけることを戒めたモンテスキューにしても、現状を追認することを求めたわけではありません。長期的には一般精神を少しずつ変化させることは可能だと考えています。啓思想家たちは現状に満足はしていませんでした。それでも、過去に比べて社会は良くなっていると判断していましたし、努力次第でさらに良くすることができるとも思っていました。もちろん、国や地域によって置かれた状況は異なりますから、改善すべき問題も、改善方法も違ってくるのは当然です。思想家によって現状に対して下す診断も同じではなく、処方箋もひとつではないでしょう。しかし、こうした多様性があったにしても、今よりも「マシな」世界の実現を目指して、現状を批判的に分析しようとする幅広い運動は確実に存在していたのです。」

「啓蒙が示しているのは、知識の拡大を社会の改善に向けて活用しようという強い意志です。科学の発展や地理的拡大がもたらした多くの知識を利用して、自分たちの社会が歴史的にどのような位置にあるのか、他の社会と比べてどんな特徴のある社会なのか、どういった長所と欠点をもつのか、これから何が可能なのかを把握した上で、より良い社会の実現を目指そうとする意欲です。」

「批判的に問題点を見つめることと、希望を捨てないことは両立するはずです。そして、それらを両立させるためには広く情報を集め、知識を拡大し、それを整理し、活用することが必要でしょう。知識を社会の改善に結びつけようという姿勢を示し、それを実践しようとする意識を強くもった集団が存在し、影響力を発揮したのが啓蒙という時代だったのです。その姿勢は、今も学ぶに値するものではないでしょうか。」